滅相も無い
東の国の果てにはかつての私の父だったものが、いるらしかった
ままあ、m ママの、ショートケーキの体を大きく抱きしめて、大きなことを言って、大きなことを言う人を信用してしまうままを母にして、それから東の国で鳥になった 乳母車を押したことがないから鳥になった 雲雀を見たことがないから鳥になった 黒いから、
この曇天のなあかでもあなたを見つけられた黒い鳥は、恥じているのよ
かつて人間であったことを、忘れたいのだから、決して子供の来ないあの国に向かうの、津波のないあの国を目指す、それをこんな寒い日に教えられたものだから
あの教室で私があの人のことでたしかに涙を流したことも、もう覚えられなくなってしまった
鳥は乳母車にのってあらわれた それをおす母に似た女にあなたは抱きしめられたひもあっただろう、黒い羽はほとんどもがれていたその存在は、足音の偉大さだけが証明の術だった、でけでけと飛べもしない
飛べもしないのにでけでけと 笑えもしないのに、知ったかぶりした音だけ持つ
燃ゆる黒さに慄いていることを告げると、いつも夜になると家を飛び出した私の父(幹・国羽・枝・蝶・屋根・土・風速)は、滅相も無い、と
フォークの動きを眺めながら倒れていった、今度はモンブランだったママの姿をよく覚えている 滅相も無い、消滅を許されない体でうっかり笑っている
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