漂流
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あたたかい

林やは

はやくなっていく逆光が、あなたの胸のなかから飛びでて、血飛沫みたいだね、と、いったあの子から消えていく、そう纏う、だって、みがかれた鏡みたいにはなりなくないよ、憶えていてよ、柔らかいグレーに触れる、ほんとうは海にもなれる、体があたたかい、食べたものから食べられていく、四足歩行になれたころ、花を摘みたくなる、とどかないものがほしいよね、浸食した果物に、熱を奪われる、 あの子はうたうことがすきだった、だからうたう、たましいが燃えている、肉食になったのだよ、波をおいかけて、おいつめられた、島があるとおもったから、泳いでいた、染みのある刃だ、美しいまどろみ、と、あなたは云った、 とどかなくても、光りはひかりで、体内は、ひらかれる、そこで、あの子はかたち、を、失う、

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