漂流
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浮く

林やは

透明な、なにもないような、あなたの世界には、翅のある、いきものがいて、待つことがとくいだから、装いを、やわらかくしている、そばにいたい、と、ぼくは云った、海があれば、そこは島だよ、波を掴まえてみたいよね、死骸が、浮いている、


「わたしたちのほとんどは水だから、共有されるべきなのよ。それでも欲望は、そこに満たないの」

「だとしても、ぼくたちは、永遠を信頼するべきだ」


天国の創造で、天国には、いけない、いけない、ひとになりたい、泳ぐことが、じょうずになりたい、失墜した鳥は、血をわけあう、純粋な好奇心だけで、すべてのうわずみを、掬っている、緩やかな、草木のにおいみたいに、ぎゅっとされて、あなたは、知ってしまった、


「どこかはないの、ここがあることが証拠よ」

「それなら、すべてを破壊しよう」

「いいえ、破壊はないわ、いつも創造されているだけよ」


のぞきこみたくて、そばにいたい、と、ぼくは云った、染みのできた肌からは、なんの液体も、でなくなった、海は、なにでできてるとおもう? あなたの世界は、跳ぶことができる、だから、首をふって、それから、沈黙する、

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